最高断熱を実現　HEAT20・G3

• 
• 
• 
• 

ZEH基準を上回る国内最高のシステム認証制度

　民間団体「HEAT20」が、国の誘導するZEH基準を上回る国内最高のシステム認証制度を創設。群馬県でも最高グレードとなるG３を取得する工務店が現れている。

アライ（高崎市）が全国で初

　住宅の高性能化（高断熱・高気密、省エネルギー）が進んでいる。新築住宅の省エネ基準適合義務化が2025年４月に迫り、官民の取り組みが本格化。最高等級が４だった断熱等性能等級は上位等級５～７の３等級が22年に追加され、断熱化の高みを見据える。国の基準とは別に民間団体「HEAT20」が、国の誘導するZEH基準を上回る国内最高のシステム認証制度を創設し、22年から認証が始まった。群馬県でも、HEAT20の中で最高グレードとなるG３のシステム認証を取得する工務店が現れている。

◎無暖房住宅近づく
　群馬県高崎市飯塚町の工務店、アライ（新井政広社長）は、全国でいち早く22年５月にＧ３認証を取得した。新井社長は高断熱・高気密住宅を長く研究し、同団体の役員（監事）を務める。「やるからには一番に最高認証を取りたかった。会社が目指す無暖房住宅に近づいた」と感慨深く話す。

◎冬でも15度以上
　認証の地域区分は「群馬県内の６地域」。G３は冬の最低室温が「おおむね15度を下回らない」という高い断熱水準だ。同社は本社社屋の増改築でG3仕様を導入。壁は高性能グラスウール３層構造の「３００㍉断熱仕様」、北の窓は厚い壁幅を生かしてLow－E複層ガラスを２組使う４重窓を採用するなど超高断熱化を図った。住宅の「熱の逃げやすさ」を示すUA値（外皮平均熱貫流率）は0.25となった。

　群馬県内では他に、高崎、伊勢崎両市に営業拠点のあるヤマト住建（兵庫県神戸市）が22年10月にG２、23年３月にG３の認証を相次いで取得。前橋市の工務店も22年12月にG2認証を得ている。
（５月10日現在、HEAT20ホームページより）

前橋工科大・三田村准教授に聞く　「真の健康住宅」を追求

　民間団体「HAET20」が創設した国内最高の断熱基準について、前橋工科大・三田村輝章准教授（環境・デザイン領域）にその意義などについて聞いた。三田村氏は学識経験者として同団体の専門委員を務める。

　―民間団体が断熱基準を設けた意義は。
　HAET20は、「住宅シナリオ」と呼ばれる基準を示していることが一番の特徴。国の断熱等性能等級は、熱の逃げやすさを示すUA値（外皮平均熱貫流率）という数値を基準にしている。HAET20ではUA値は目安に過ぎず、室温と省エネルギーの二つの指標を示している。（国内最高水準としたのは）断熱性能が上昇することで、省エネルギーだけではなく、ヒートショックを起こさない、健康で快適な暮らしを実現するため。「真の健康住宅」を考えてのことだ。
　民主導でできた水準を踏襲する形で、国も2022年に上位の断熱等性能等級（５～７）をつくり、性能を引き上げた。

　―省エネルギーは、部分間欠暖房と全館連続暖房で規定している。
日本の伝統的な住まい方は、暖房は「部分間欠暖房」と言って、家の一部分を人が部屋にいる時だけ暖房する方法をとっている。一方、欧米は「全館連続暖房」で、家全体を暖房するからエネルギー消費は増えてしまう。
　HEAT20は、二つの暖房方式でどの程度の削減効果がありそうかの目安を示している。室内の温度むらを小さくした「冬の暖かい住宅」を考え、具体的な暖房時最低室温を設け、高水準の断熱と省エネルギーを追求している。

　―省エネ基準適合義務化の影響は。
　新築住宅の省エネ基準適合義務化は、当初は20年に実施される予定だったが25年に延期された経緯がある。20年に当時の菅義偉首相が「2050年カーボンニュートラル」を宣言した。達成を考えて逆算すると「義務化は待ったなし」の状態だ。基準は断熱等性能等級４、一次エネルギー消費量等級４で　　「そう高いものではないが、義務化でボトムアップが期待できる」。
　国はさらに30年以降の新築住宅でZEH基準（断熱等性能等級５、一次エネルギー消費量等級６）の義務化を目指す目標を立てている。国の主要対策はここまでのため、民間のHEAT20がより上位の基準を設けたという背景もある。

　【略歴】みたむら・てるあき　前橋工科大環境・デザイン領域准教授。専門は建築環境工学、建築設備工学。室内の高い湿度が健康に及ぼす影響などを研究、地元工務店と共同で温湿度データを継続的に収集している。博士（工学）。