人口減少対策 若年層流出に危機感 子育て支援で移住者増に力

人口減少対策 若年層流出に危機感 子育て支援で移住者増に力
       

「愛着がある前橋で就職したかったけど…」。今春、県外の大手企業に就職する前橋工科大4年の女子学生(23)が打ち明ける。同級生も多くが東京圏や県外の地元に戻り、市内に残るのはわずかという。
人口減少は前橋市にとっても最重要課題の一つ。国立社会保障・人口問題研究所が昨年末に公表した将来推計人口によると、市人口は2020年の33万2149人から、50年に27万1548人と2割近く減るとみられている。
際立っているのが若年層の市外流出だ。総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、市内の15~24歳は市外への転出が転入を上回る「転出超過」が慢性化。転出から転入を引いた人数は20年に305人、21年に254人に上り、コロナ禍が落ち着いた22年は494人と急増した。
進学や就職を機に地元を離れて東京圏などに移るケースが目立ち、市内5大学の卒業生のうち市内企業に就職する割合は13%前後にとどまっている。
市は地元企業の魅力周知や企業誘致に努め、市内大学生の定着やUターン就職を促しているが、歯止めはかかっていない。政策推進課は「若者が東京へ、海外へと挑戦するのはやむを得ない。ただ、子育てのタイミングなどで戻ってもらえる仕組みを整えないと、市内の活力が失われてしまう」と危機感をにじませる。
一方、市外からの移住者獲得は一定の成果を上げている。22年度は130人の移住があり、前年度の1・5倍に増えた。
市は22年度、東京圏からの移住者に支給する「移住支援金」に「子ども加算」を新設して18歳未満の子どもがいる場合、1人当たり30万円の上乗せを始めた。23年度は上乗せ金額を100万円に増額。市によると、移住者から「子育て加算が高いので選んだ」との声も寄せられており、子育て世帯への手厚い支援が強みになっている。
さらなる移住の増加に向け、力を入れているのが地域の食や自然、歴史文化などを重視し、ゆったりと暮らせる「スローシティー」の地域づくり。赤城山南麓の芳賀、富士見、大胡、宮城、粕川の5地区で進めており、こうした暮らし方や理念に共感して移住して来る人もいるという。
昨春開業した道の駅まえばし赤城には、地域に詳しい「移住コンシェルジュ」にビデオ通話やチャットで相談できるタブレット端末を設置。住まい探しや仕事探しの支援、地域事情の説明など、移住後のさまざまな疑問や悩みをフォローし、定着につなげる取り組みも進めている。

  

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