下仁田町下仁田地区 官民で中心街活性化 イベントや食、住民率先 

下仁田町下仁田地区 官民で中心街活性化 イベントや食、住民率先 
       

日暮れとともに通りのあんどんに光がともり、おはやしの音色が聞こえてくる。今月初旬、下仁田町の中心街、下仁田地区。諏訪神社秋季例大祭(11、12日)で熱を帯びる街は近年、高齢化や空き家の増加が課題となっている。街では住民有志がイベントを開き、町が下仁田駅で情報発信施設の整備を進めるなど、活性化の道筋を模索している。

昭和の古き良き時代を振り返ろうと、9月中旬に初めて開かれた「下仁田オールドスクール」。仲町大通り商店街などでバンド演奏やクラシックカーの展示が行われ、5千人の来場者を集めた。企画した田村純一さん(51)=同町=は「今の若い子はにぎわっていた頃を知らない。自分たちでもう一度こういう街をつくれるんだと自信を持ってほしかった」と説明する。

田村さんは町に人を呼び込もうと、15年前にイベントの運営団体を立ち上げた。音楽フェスなどを開催するうちに仲間が増え、町外から手伝いに来てくれる人も出てきた。「人が温かく、みんな地元が好き。それでいて外から来た人を受け入れる土壌があるのは下仁田独特じゃないかな」。2023年には空き家を改装してカレー店「カレーディエム」を開店し、一角をイベントスペースとして無料で貸し出している。

商店街で老舗米穀店「恵比寿屋」を営む堀越健介さん(55)は、30歳で家業を継ぐために都内から帰郷した際、街の変わりように驚いたという。「小学校の帰り道は人と肩がぶつかるほどだったのに、人も明かりも少なくなっていた」

活気を失いつつある街を何とかしようと、観光振興による活性化を目指す「下仁田まちづくり委員会」に参加。委員長として街歩きマップの作成やイベント開催を仕掛けてきた。

堀越さんは22年に町が設置した「街なか活性化事業検討委員会」の委員となり、町が下仁田駅に建設を進める情報発信施設の計画づくりに携わった。施設は、周辺の飲食店や世界遺産の荒船風穴への周遊を促す拠点として26年度中に完成予定。計画策定に当たり、全町民の3分の1に当たる2千人にアンケートを行った。堀越さんは「町民の思いが詰まった施設。造って終わりではなく、定期的にイベントを開くなどうまく活用していってほしい」と期待する。

かつて材木やこんにゃくの取引が盛んに行われた街には数多くの飲食店があり、「下仁田グルメ」として注目されている。戦後間もなく開店した食堂「食亭エイト」もその一つ。2代目の市川進さん(73)は「お店によっては土日に行列ができる。うちも最近は町外のお客さんの方が多い」と話す。

市川さんは、ソースの代わりにしょうゆだれを使う「下仁田かつ丼」の提供店でつくる団体の代表を務め、加盟店を巡ると景品がもらえるスタンプラリーを行っている。「お客さんが来ないと飲食店はやっていけない。下仁田かつ丼を広め、多くの人に下仁田に足を運んでもらえるようにしたい」と力を込めた。

【メモ】70年で人口7割減
下仁田町の人口は、5町村が合併して現在の町制が敷かれた1955年が2万1794人。その後は85年に1万4237人、2020年が6576人と減少が続き、25年5月末で5993人と6000人を割り、70年で7割以上減った。近年は死亡数が出生数を上回る自然減の影響が強い。
町中心部の商店などでつくる 町商業協同組合によると、組合員は 30年前は70店ほどあったが、現在は二十数店に減っている。

  

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