「ごずこん」経営
野崎 雄太さん(51)秀美さん(56)=桐生市境野町
桐生市境野町の住宅街に、古民家を改装した家庭料理の店「ごずこん」がある。切り盛りするのは2018年9月に東京都から移住した野崎さん夫妻。店の窓からは雄太さん(51)が手入れする庭木の緑が広がる。「のんびりしていて、どこからでも山が見える自然の近さがいい」と桐生での暮らしを気に入っている。
雄太さんは東京都、秀美さん(56)は岐阜県の出身。以前は植木屋の社員、料理学校の講師として働いていた。夢だった「庭のある場所で店を出すこと」が明確になった16年ごろ、本格的に移住を考え始めた。
当初の移住先候補だった千葉県では条件に合う物件と縁がなかった。ウェブサイトで見かけた桐生市の物件が思いがけず魅力的で、初めて訪れた。街を散策する中で「こぢんまりしているけど長年続いている個人店が多い。ここならやれる」と確信した。
同市の空き家バンクを使い、最終的に現在の店舗兼住宅に決めた。「価格も雰囲気も断トツで良かった。庭の手入れも行き届いていた」。19年7月の開業に向け2人で床や壁を改装し、自らつくり上げた店への思い入れは一層強まった。
週替わりで提供するメニューでは、店名の由来である「ごま、大豆、昆布」や、県産の野菜を使うなど食材にこだわる。本県の一番の魅力は「野菜や肉など食材に恵まれていて、都内よりずっと安価で買えること」と雄太さん。毎週水曜に前橋、伊勢崎両市の農産物直売所に足を運び、新鮮な野菜を選んでいる。
店を通じて人とのつながりも増えた。秀美さんは「面倒見が良く、声をかけてくれる人が多い」と話す。移住後すぐ周辺の住民から「店を出すと聞いた。頑張ってね」「来てくれてありがとう」と歓迎された。同時期に移住し、開業した人との交流も多い。「境遇が近く気が合い、同期のように仲が良い」と周囲の人々との関わりも心地よいと感じている。
移住して間もなく7年がたつ。2人は「まずは10年店を続けたい。盛り上げ役は向かないけど、続ける中で桐生に何か貢献できていたらいい」とほほ笑む。
移住者が増えつつある本県。雄太さんは「難しいことは次々と起こるから、とにかく挑戦するのがいい。縁があれば進む」と自身の経験を踏まえ、力を込めた。
【マイ・フェイバリット・群馬】大川美術館 名だたる作家間近に
ピカソや草間彌生など名だたる作家の作品を、自分の部屋に飾られているくらいの距離感で見ることができる。都会の美術展にはその時しか見られない厳選した作品が集まるが、同館では同じ絵を見る機会も多い。なじみの店に行く感覚で鑑賞している。
元々美術が好き。移住して間もない頃、行き詰まった時によく訪れていた。行くと原点に戻った気持ちになれる。山の中腹の立地も趣を感じる。