移住 高まる人気“好循環” 町の魅力向上、人を呼び込む

移住 高まる人気“好循環” 町の魅力向上、人を呼び込む
       

2007年に中之条町で始まった2年に一度の国際現代アートの祭典「中之条ビエンナーレ」が13日開幕し、10回目の節目を迎える。23年の前回は当初の10倍に当たる48万人が来場し、年々人気が高まっている。作家の移住をきっかけに町のイメージが良くなって一般の移住者も増加。町民の意識も変わり、協力的になった。これまでの歩みを振り返り、今後を展望する。

「アーティストとして、地方で生きていく覚悟を決めた。やれることを何でもやる」。中之条町に移り住んだ神奈川県出身の彫刻家、西島雄志さん(56)は決意を語った。

きっかけはビエンナーレだった。国内外の作家が町内に数カ月滞在して制作に励み、秋の1カ月間で展示する。11年から参加を重ね、町の人の温かさと制作に打ち込める環境を気に入って県内に引っ越し、23年に中之条に移った。

購入した古民家をギャラリーに改装して「藝術(げいじゅつ)中之条」と名付け、今月6日に開業した。2年前に東京・銀座で開いた個展でも出展した鳳凰をモチーフとした大作を飾り付けた。

ギャラリーと並行して同日、移住などで町内を拠点としている作家7組が、使わなくなった旅館の客室7室を活用して自由に表現する美術館「YAAP(ヤープ)」をオープンした。

2年に一度の会期以外にもアート発信の場を求める作家、来場者双方の声に応える狙いがある。4畳半の部屋全体をキャンバスとする作家や、制作過程も見てもらう「ライブドローイング」の会場とする作家、ビエンナーレとは作風を変えて展示する作家らの実験的な作品が並んだ。

ギャラリーには作家のグッズや作品を販売するショップも併設した。「アートに興味を持っている人を巻き込み、町にアートを根付かせたい。お金も稼いでいく」と意気込む。さらなる仕掛けも考えている。

ヤープに建物を提供する「旅館やまびこ」にはアート関連の宿泊客が増えた。経営者は「この先、静かに旅館を続けていくのかと思っていたが、アーティストが来てにぎやかになった。どんな作品を作ってくれるのか、わくわくする」と期待する。

ビエンナーレをきっかけに中之条に移住した人は30人近くになった。町内では藝術中之条やヤープ以外にも、会期に合わせて複数の作品展やアートイベントが予定されている。

ビエンナーレ総合ディレクターの山重徹夫さん(50)は「作家たちのエネルギーがすごい。途切れることのない上昇気流ができている」と目を細める。

  

他の記事を読む

カテゴリー