飲食店経営 西尾 祐諄さん(66)=富岡市妙義町大牛
東京都から移住し、2020年に妙義山の麓に「珈琲焙煎(コーヒーばいせん)所 月とゆふづつ」を開設した。近くに構える「古民家カフェ桑庵」でこだわりのコーヒーを提供しながら、地場産品を紹介するマルシェの実行委員長を務めるなど、地域の魅力発信に取り組んでいる。
大阪府出身。30代で上京して不動産関連会社を起業した。バブル経済が崩壊した直後で、空きビルの再開発や空き家のリノベーションを手がけた。
新宿の繁華街に居酒屋を持つなど事業は順調だったが、仕事に忙殺される日々に「一度ゆっくりしたい」と思うように。還暦を迎え、関東近郊で移住先を探す中で妙義の物件を見つけ、第二の人生を歩む場所に決めた。
「妙義山という観光資源に、風格のある母屋。即決だった」。19年に移住し、農業用倉庫を使って焙煎を始めた。築140年の養蚕家屋である母屋は近隣住民の手を借りて改装し、22年に念願だった古民家カフェをオープンした。
焙煎は都内にいた頃からの趣味だったが、住宅が密集する都心では煙に対して苦情が寄せられることもあった。「ここでなら理想の焙煎を追求できる」。インドネシア産「マンデリン」やエチオピア産「ゲイシャ」など20種類以上の豆を扱い、昔ながらの深いりで仕上げる。今では前橋や高崎、軽井沢からも客を集めるようになった。
コーヒーと共に情熱を燃やすのが妙義地域の振興だ。実行委員長を務める「妙義ふるさとマルシェ」は22年から妙義ビジターセンターで開催し、11月に6回目を計画中。当初は「妙義に人が来るのか」と疑問視する声もあったが、回を重ねて3千人が来場するイベントに成長した。
「外から来たから地域の良さが分かり、しがらみがないからうまくいった」。次の目標は周辺の空き家を活用し、若者らが飲食や物販の店舗運営を試せるチャレンジショップを営むこと。「食べていける見通しが立たなければ移住なんてできない。貯金がない若者にも移住してもらえるように環境を整えたい」
【マイ・フェイバリット・群馬】
◎甘楽の小幡エリア 石畳、水路 街並み感動
推しの地は甘楽町小幡エリア。群馬に移住して間もなく小幡を訪れ、石畳と水路が織りなす歴史的な街並みに感動した。中でも楽山園の庭園の美しさに見ほれ、ベンチから築山をずっと眺めていた。
近くには甘楽ふるさと館があり、よく日帰り入浴施設を利用している。移住した地からほんの少しの距離で癒やされる場所があるというぜいたく。群馬は本当にいいところが多い。