tango farm(タンゴファーム)経営 粕谷 端吾さん(47)めぐみさん(43)夫妻 =渋川市赤城町津久田
「畑から見える、この景色が最高」。粕谷端吾さん(47)とめぐみさん(43)夫妻は2022年10月、赤城山西麓に位置する渋川市赤城町津久田に移住し、23年4月に新規就農した。思い描いていた通りの市街地を見下ろせる眺望。山あいの畑で、少量多品目の有機農業に励む。
2人はそれぞれ横浜市と相模原市の出身。粕谷さんは8年ほど前、当時勤務した会社で新規事業を検討する中、農業を学び始めた。企業として新規参入が難しかったことなどから「自分でチャレンジしてみよう」と就農を決意した。
めぐみさんも卸売業に従事していた元会社員。充実していたが、40歳を前にリタイア後の姿を想像した。「体を動かせて、生涯現役の仕事をしたい」。テレビ番組で小規模でも経営できる今の栽培方法を知り、すぐに動き出した。
21年夏ごろ、神奈川県内の粕谷さんの研修先にめぐみさんが訪れ、2人は意気投合。就農を見据え、22年3月に結婚した。
先に移住先を検討していた粕谷さんは、ある程度の規模の畑を低価で借りられる中山間地を求めて、車でのアクセスが良好な群馬、埼玉両県を巡っていた。2人で次の研修先を高崎市倉渕町の農家でつくる「くらぶち草の会」に決め、群馬の災害の少なさも魅力に感じていたため、同市に移住した。
同団体の指導を受けて生産現場を肌で学びながら、今後の拠点とする物件を探した。現在の自宅は空き家バンクで見つけた。価格や景色、関越道赤城インターチェンジ(IC)に近いという立地などが決め手となった。地元の不動産店が親身になり、地域の細かな情報を教えてくれたのも後押しとなった。
22年10月の引っ越し前に地域清掃に参加すると、地元の人たちはすぐに受け入れ、伸び放題だった自宅前の木の伐採まで手伝ってくれた。「群馬の人は皆、面倒見がいい」と粕谷さん。地域に見守られながら、のびのびと農業に打ち込む。
就農3年目。現在はズッキーニやジャガイモ、ナスといった野菜約40種を栽培し、生産品は市内を中心とした直売所をはじめ、企業を通じて首都圏に出荷している。雇用の創出も視野に入れつつ、経営の安定化を進める。めぐみさんは「タンゴファームだから買うという人が増えてくれたら」とほほ笑む。
【マイ・フェイバリット・群馬】
◎ポケットパーク見晴台 雄大な景色に感動
関越道赤城ICから、県道大間々上白井線を北西に進んだ先にある展望スポット「みんなのポケットパーク見晴台」(渋川市赤城町津久田)。子持山や榛名山の雄大な景色、市内の街並みや農地を見渡せる。
「初めて訪れた時、『おお』と思った」と感動を振り返るめぐみさん。サクラの見頃には、弁当を持って眺めを楽しむこともある。