群馬県空き家対策プロジェクト 「空き家」ワンストップの相談窓口

空き家
実行委員長を務める太田市のNPO法人「よろずや余之助」会長 桑原 三郎さんに聞く
       

空き家解消を目指して4つのNPO法人が立ち上げた「群馬県空き家対策プロジェクト」は、2019年の活動開始以来、県内外からさまざまな相談が寄せられている。行政や多方面の専門家と連携し、一つの窓口で幅広い分野の相談に対応できることが強みだ。最近は、介護施設の入所のため自宅が空き家になった高齢者の家族からの相談が増え、居住支援にも力を入れている。

 

よくある相談事例や解決方法、居住支援について、同プロジェクト実行委員長を務める太田市のNPO法人「よろずや余之助」会長、桑原三郎さんに聞いた。

          
Q1 プロジェクトが立ち上がった経緯は?
  

          

A.よろずや余之助は、太田市内の方からさまざまな困りごとの相談を受けていますが、特にプロジェクト設立の4年ほど前から、相続や土地の境界など空き家に関する相談が増えてきました。解決に複雑な手続きが必要になるケースもあり、弁護士や税理士、解体業者など地域の専門職と連携して「空き家対策専門チーム」を設けて対応しました。窓口の一元化で多方面の専門家につながることができるため、次第に市外や県外からも相談が寄せられるようになりました。

 

そこで、これまでのノウハウを共有し、一体となって取り組む組織をつくろうと、親交のあった介護や福祉関連の事業を手掛ける「じゃんけんぽん」(高崎市)、「わたらせライフサービス」(桐生市)、「エプロンの会地域福祉サービス」(中之条町)の3団体に声を掛けました。

 

窓口が増えたことで、全県をカバーできる体制が整い、活用できる空き家の情報も広く発信できるようになりました。これからも気軽に安心して相談できる場を増やしていきたいと考えています。

          
Q2 居住支援法人とはどのようなものですか?
  

          

A.「居住支援法人」とは、低所得者、被災者、障害のある人、子育て世代など、住宅確保に配慮を要する「住宅確保要配慮者」に、賃貸住宅などの入居相談、家賃相談、見守り生活支援などの支援をする法人のことです。

 

最近は、介護施設に入所するために自宅が空き家になるという相談事例が多くなってきました。これまで大切に住んできた家ですから、建物は損傷が少なく利活用しやすい物件です。解体や処分ではなく、活用手段として居住支援につなげていきたいと考えています。

 

私たちは、空き家や、将来的に空き家となる可能性がある自宅を持つ高齢者やそのご家族が、いざという時に安心して任せられる体制づくりを目指して活動しています。県内に5つある居住支援法人のうち、2つがこのプロジェクトの法人です。住まい探しで困っている方を、わたしたちのサポートネットワークで支えていきたいと考えています。

 

■4つのNPO法人

よろずや余之助(太田市) TEL:0276-46-6887

じゃんけんぽん(高崎市) TEL:027-350-3191

わたらせライフサービス(桐生市) TEL:0277-70-6677

エプロンの会地域福祉サービス(中之条町) TEL:0279-75-3911

          
Q3 よくある相談事例やトラブルの解決方法は?
       

▶ケース1

相続した土地に草が生い茂り、近隣住民からの苦情があったと市から連絡を受けた。東京に住んでいるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で現地に行って対応できない。

 

A.相続者が県外在住で空き家の管理ができないケース。市からの連絡の翌日、除草と剪定の相談の電話を受けた。早速、現地調査を行い、剪定、除草の見積もりを業者に依頼。その後、除草と庭木の剪定、除草剤散布を行った。

建物自体は十分に活用できるので、居住支援検討物件として利活用につなげていくことになった。

 

     

          

▶ケース2 数年前に突然、県外の司法書士から叔父の空き家の相続に関する文書が届いた。母方の親戚とは付き合いがないため、状況が全く把握できないと返答し、その後は何の連絡もなかった。ところが昨年、県外のA市から叔父の空き家が管理不良、相続人が不明で対処に困っていると連絡を受けた。相続人の一人ということで協力を求められている。

 

A.空き家の相続人が分からなかったケース。A市の司法書士から連絡を受けた時点では相続放棄できたが、相続問題が発生してから期間が経過しているため、相続放棄ができなかった。

A市や弁護士、司法書士とも連絡を取り合いながら、相続人や相続放棄者を調査したところ、相続人は相談者と同市在住のMさん、ほかに3人いると分かった。3人は現住所が判明した後、A市が何度か文書を送付しても返答がなかった。

遺産分割協議調停手続き後、3人が相続を放棄したため、相談者とMさんが最終相続人となった。すでに購入希望者がいたこと、空き家の土地建物の一部はMさん名義となっていることから、解体や更地、諸手続きなどの費用はMさんが負担するということで相談者は相続放棄。相談を受けてから半年が経過して問題が決着した。

     

          

▶ケース3 介護施設の担当者から、現在入居中の男性の住居についての相談。一人住まいだった自宅が空き家になって半年経過したが、今後、自宅に戻ることは難しい。後継ぎはなく、土地は借地なので解体して返却したい。

 

A.相談を受けて現場に行ってみたところ、建物はまだ使えそうな状態だったが、玄関は無施錠だったので驚いた。室内は布団が敷きっぱなしで、弁当の空き容器など、ごみが散乱した状態だった。男性に確認すると覚えがないといい、施設担当者も入所時はこのような状態ではなかったという。隣の住民は、人の気配がしていたので誰かが住んでいると思っていたそうだ。

どうやらホームレスの居場所になっていたようだ。火事になったら大変なので、急いで解体処分を決行し、無事に土地の返却を済ませた。3週間でスピード解決した。

     

          

群馬県空き家対策プロジェクトのホームページはこちらから

 

取材協力/NPO法人 よろずや余之助

※記事内写真はイメージです

  

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