HEMSで消費エネルギーを「見える化」する
GX志向型住宅 性能高く個性的な家
住宅分野のグリーントランスフォーメーションを進めるため、国は本年度、省エネ性能の高い住宅への補助制度を拡充した。新しい基準「GX志向型住宅」を設け、要件を満たせば160万円を補助する。県内でも適合する住宅の販売が始まっており、快適な暮らしを実現できる住まいづくりを提案している。
全世代対象の補助金がスタート
GXを体感できる石田屋のモデルハウス
国土交通省は、省エネ性能が高い「ZEH」水準の住宅や、長く住み続けられるよう施工された「長期優良住宅」に補助金を支給してきた。
GX志向型は、子育て世代でなく全世代が対象。断熱性能の等級が上から2番目の6以上、消費エネルギーを再生可能エネルギーなどによって実質ゼロ以下に抑える、家庭内のエネルギー使用状況を「見える化」する高度エネルギーマネジメントシステム(HEMS)の設置―といった要件を満たさなければならない。
蓄電池で災害時にも安心
蓄電池のおかげで災害時も安心だ
住宅建築などを手がける石田屋(藤岡市藤岡)もGX志向型に適合する住宅を販売している。
主力の「スマートプリーマ」は断熱性能が高いだけでなく、大容量の太陽光発電と蓄電池をセット。エネルギーを効率よく利用でき、光熱費を抑制できる。蓄電池を備えているため、災害時に電気を使えるのも特長だ。
性能満たすモデルハウス
HEMSで消費エネルギーを「見える化」する
石田昌嗣社長は「補助金効果もあるだろうが、光熱費を大幅に削減でき、環境に優しいとあって、お客さまの関心は高い。災害時に電気を使えるといったレジリエンスへの意識も高まっている」と話した上で、「新築を考える方であれば、GX志向型を選ぶメリットは大きい」と指摘する。
埼玉県本庄市に新たに設けたモデルハウスは木造平屋建てで、太陽光発電、蓄電池、電気自動車(EV)、IoT(モノのインターネット)の活用を提案する。基準を上回る最高ランクの断熱等級7に加え、耐震性の最高基準である耐震等級3の構造とした。
自然の恵み活用
開放的な関工務所のモデルハウス
自由度の高い空間設計と高耐震性の両立にこだわる関工務所(川場村谷地)は今年4月、高崎市新保町にGX志向型のモデルハウスを新設した。自然の光や風を利用するパッシブデザインを取り入れ、エネルギー消費を抑えつつ快適な生活環境を実現している。
強い日差しはシェードで遮断
2階南面に大開口の窓を設け、リビングにはサンルームを併設した。くつろぎの場としてだけでなく、室内の空気を太陽光で暖め、コンクリートの床で蓄熱。暖めた空気はリビングや脱衣室、寝室などに送る。一方、夏の強烈な日差しは軒裏のシェードで遮断。エアコンは2台しか設置していないが、冷気を他の部屋に送るため、屋内温度は26度以下に保てるという。
「お客さまの多くがデザインを重視しており、デザインと性能の高さの両立を目指している」と北爪俊之さん。補助金や高い省エネ効果によって「長期的な視点でみるとトータルコストは高くない」と話す。
リビングに隣接するサンルームで空気を暖める
2050年カーボンニュートラルに向け、住宅のGX化は避けて通れない。住宅会社には、こうした動きに対応しつつ、多様化する顧客のニーズに応えられる住まいづくりが求められている。
※「上毛新聞社環境特集」2025年6月3日付掲載
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