「空き家」はなぜ問題なのか?

空き家
「空き家」はなぜ問題なのか?
       

近年、空き家の増加が問題視されている。しかし、空き家問題に危機感を持って正しく理解している人は、そう多くはないだろう。空き家は適正に管理されないと他人に思わぬ損害を与えてしまう可能性もある。まずは現状を知ることが大事。そしてこれをきっかけに身近な空き家について考えてみよう。

          
群馬県の空き家の現状を知ろう
       

総務省統計局が発表した「平成30年住宅・土地統計調査」によると、群馬県の総住宅数は94.9万戸。5年前と比べると4.6万戸(5.1%)増加している。そして、空き家の数は15.8万戸と、こちらも5年前より0.8万戸(5.4%)増加し、空き家率は16.7%と過去最高を記録している。ちなみに全国平均の空き家率は13.6%で、空き家率の高い順を都道府県別に見ていくと群馬県は12番目にあたる。

 

空き家は大きく4つの種類に分けられる。不動産会社が管理する入居者募集中の「賃貸用」、同じく不動産会社が管理する販売中の「売却用」、所有者が管理する別荘などの「二次的利用」、それ以外でなんらかの理由により長期不在状態となっている「その他」。これらの中で最も問題となるのが「その他」に分類される空き家だ。群馬県では「その他」の割合が6.2万戸で39.5%を占めている。

     

          
増え続ける空き家の原因
       

それでは、なぜ空き家は年々増加しているのだろうか。一般的な原因のひとつには、日本が抱える高齢化社会が挙げられる。それは自宅を所有している高齢者が老人ホームなどの施設へ入居したり、子どもの家へ転居することによる。今後、団塊の世代を含めた高齢者は急激に増えていくと予想され、それに伴って空き家の数も増加してくと考えられている。

もうひとつの原因としては、所有者自身が空き家の管理や利活用についてさまざまな問題を抱えているということ。空き家の多くは高齢者が住んでいた自宅、あるいは親から子どもが相続した実家を、そのまま何もせずに放置してしまうことにある。高齢者が所有者の場合、いつかは自宅へ帰りたい、思い出が詰まっている家を手放したくない、認知症を患って判断が困難になるなどの理由が挙げられ、子どもが相続した場合は、離れた場所で暮らしている、利活用について身内でもめている、どこに相談したらいいのかわからないなどの理由によって、手が付けられず放置したままになっている。

     

          
放置空き家が被害をもたらす
       

適正に管理が行われていない空き家は「安全性の低下」「公衆衛生の悪化」「景観の阻害」など、地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼし、すでに社会問題にもなっている。放置しておけば、雑草が高く伸びて景観が悪化し、不衛生な状態から悪臭が発生したり、害虫の繁殖の原因にもなり得る。そのうえ老朽化した空き家は地震や台風、積雪などによって倒壊する危険性もはらんでいる。さらには、不法侵入や不法占拠などの犯罪リスクが高くなるとも言われ、ほかにも粗大ゴミなどの不法投棄や放火の原因につながるという問題もある。また、空き家や空き地が目立つと、地域ブランドを損なう原因となり、その周辺の不動産価格の下落にも影響するという。

 

家は管理されない状態が続くと、他人に思わぬ迷惑を与えてしまう可能性がある。あくまでも空き家は個人の財産であり、所有者や相続人に管理責任があるということをしっかりと把握しておきたい。家族や親族と将来についてしっかりと話し合っておくことが大切だ。

話のきっかけとして、物の整理から始めるのもよいだろう。

 

取材協力/群馬県住宅供給公社ぐんま住まいの相談センター

2021年1月28日付 すみかくらぶ 掲載

     

  

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